# 第1章:はじめに

# まえがき

「人工衛星」というキーワードを聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか? 小惑星イトカワに赴き、2010年に地球に帰還した「はやぶさ」を思い浮かべる人が多いかもしれません。 実は人工衛星には、はやぶさのように宇宙を探索する惑星探査機以外に、地球の周りをぐるぐると回って地球環境を観測しているものがあります。 後者の数はなんと約4600機、それだけたくさんの衛星が回っています。 さて、そんな人工衛星は、もちろんただ地球を回っているだけではありません。 アマゾンの森林伐採の監視や、気候変動による氷河の融解を観測したりと、様々な用途に役立てられています。 そんな便利な衛星画像ですが、今までは人工衛星によって撮影された画像を取得するには、一枚何万円も払わなければ手に入れることは出来ませんでした。 しかしながら近年、衛星観測の世界にもデータのオープン化の波が押しよせ、現在では多くの画像を無償で利用することが出来るようになりました。

そのような状況にも関わらず、人工衛星画像の活用は、まだ一般に広く浸透していないのが現状です。 その理由としては、衛星画像を入手するためには海外のサイトに行かなければならないことや、取得した画像を表示するには専門のソフトウェアが必要であったことが原因でした。

そんな中、2010年の12月に米GoogleがGoogle Earth Engine[@gorelick2017google]というものをリリースしました。 これは人工衛星画像を自前のパソコンにダウンロードすることなく、ブラウザ上で解析を行うことが出来るという画期的なものでした(研究・教育・非営利目的に限り無償です)。

本書はGoogle Earth Engineを実際に使いながら、人工衛星画像の原理とその解析手法について、手を動かしながら学んでいきます。

# 対象読者

本書の対象読者は以下を想定しています。

  • ビッグデータ時代に人工衛星画像の解析をしてみたい
  • 大学で人工衛星の研究室に配属されたが,何から手を付けたらいいか分からない
  • 人工衛星画像解析を通じてプログラミングを学びたい
  • Google Earth Engineを使ったことがあるが,人工衛星画像解析の原理を学びたい

一方で,以下のような読者は本書では物足りないかもしれません。

  • すでにGoogle Earth Engineを使いこなしている人